Euphobia peplus L.

チャボタイゲキ(トウダイグサ科)


チャボタイゲキ E. peplus L.はヨーロッパ、北アフリカ、中央・西アジアに分布する種で、日本では関東以南~九州に帰化しているがまだ稀である。

属名のEuphorbiaはローマ時代の医師Euphorbusに由来するもので、彼が初めて トウダイグサ属の植物の乳液を薬に使ったからだという。 トウダイグサ属は世界の熱帯から温帯に広く分布し、約2000種の草本または低木からなる巨大な属で、日本には約20種がある。






 
 Fig.1 一年草で高さ5-30cm、茎は立ち上がる 
     日の当たる場所では赤く紅葉して美しい


 Fig.2 茎葉は互生し主茎の先端に3枚の輪生葉をつける

  Fig.3 茎葉は倒卵形、1-2cm×1cm、葉柄をもつ 


 Fig.4 4つの腺体には両端に角状の突起がある

 Fig.5 杯状花序、中心の雌花が先に熟し倒れこむ

 
 Fig.6 杯状花序の総苞内 雌花1個と雄花10個 

   Fig.7 蒴果は2-2.5mm、3室で各背面に2条の顕著な翼がある 


 倒れていた蒴果は、熟すと果柄が立ち上がり一瞬ではじけて種子を飛ばす。 室内でチャボタイゲキが40cmほど種子を飛ばすのを観察した。


  Fig.8 熟して果柄が立ち上がる蒴果

  Fig.9 蒴果がはじけて種子を遠くへ飛ばした後


 Fig.10 種子は赤褐色で1.5× 0.8mm、白い円錐形のcaruncleをもつ

  Fig.11 種子は各側面に3-4個のくぼみがある、乾燥すると表面が白くなる


 チャボタイゲキの種子は表面が水分にふれると、まるで赤ちゃんの紙おむつのように瞬く間に吸水して大きく膨れあがる。 水分の吸水と保水のしくみを持ち、定着しやすく発芽するのに都合良くできているのだろう。また、粘着質のため動物に付着して散布することもできる驚くべきしくみである


  Fig.12 種子の表面は給水すると大きく膨れ、粘着質となる

  Fig.13 caruncleは種子から容易に脱落する

種子に着いているcaruncleはアリ散布のためのものであるが、チャボタイゲキのcaruncleは容易に脱落する(Fig.13)。 これではちゃんとアリに運んでもらえないのではないだろうか。 
一方、同じ属のトウダイグサの種子は大きくて、,caruncleはしっかりと着いていて粘着質ではない。(Fig.15)。
この違いはいったいなぜだろう? 

 
 Fig.14 トウダイグサ Euphorbia helioscopia L.
 
 Fig.15 トウダイグサの種子, caruncleはしっかりと着いている

 Baiges,J.C.ら(1991)は、トウダイグサ属の種子を6つのタイプに分類し、トウダイグサの種子タイプ(Ⅲ)はアリ散布を行い、E.chamaesyceのように粘着質であるが、caruncleが無い種子タイプ(Ⅴ)は鳥散布を行うとしている。
チャボタイゲキのように粘着質で、caruncleが脱落しやすいタイプ(Ⅳ)は、アリ散布に加え、鳥散布のような新しい散布形態への適応に役立っていると述べている。

【引用文献】
Baiges,J.C.et al,1991:Seed dispersal in W Mediterranean Euphorbia species.Bot.Chron.10:697-705

                                                                               2014.4.24

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